東大病院小児集中治療室 PICU

心臓病全般についての質問

「チアノ-ゼ」とはなんですか?

「チアノ-ゼ」とは、血液のなかの酸素が足りない状態のことをいいます。。血液の中には、赤血球があり、この赤血球のなかに「ヘモグロビン」とよばれるたんぱく質があります。このヘモグロビンに酸素がくっつき、体内に酸素を供給しています。酸素のついたヘモグロビンは赤く、これが血液の色になっています。通常、動脈の中のヘモグロビンは100%近く酸素がくっついています。この酸素が全身で使われて酸素のすくなくなった血液が心臓へもどってきます。そして肺で酸素をもらってまた全身へでていきます。

チアノ-ゼになると、血液のなかの酸素の割合が減ります。大人の場合は、主に肺の機能が悪いために酸素の割合が減ることが多いのですが、チアノ-ゼ性心疾患とよばれる心臓病では、全身から帰ってきた酸素の少ない血液(黒い血液、あるいは青い血液)が心臓から出て行くときに混じってしまいます。そのために、酸素の割合の少ない血液が全身へながれることになるのです。そのため、顔色、唇や爪の色が青ざめたような色になります。

心臓病の種類によって、常にチアノ-ゼがあり、あまり変化のないもの、あるいはファロー四徴症のように時々強くチアノ-ゼがでるものなどがあります。

「心不全」とは、どんな状態のことをいうのですか?
「心不全」になるとどんな症状がでますか?

「心不全」とは、心臓が全身にたいして十分な血液を送り出せない状況のことをさします。

先天性心疾患の場合は、心臓の筋肉そのものが悪い(ポンプの機能が悪い)ということは少なく、多くの場合、肺へ血液が多いために肺と心臓両方に負担がかかる(心室中隔欠損症など)ことでおこります。内科的治療としては、利尿剤をつかって心臓と肺の負担をとったり、強心剤をつかって心臓の働きを助けてあげる治療がありますが、これらの治療でも症状が改善しない場合、手術などの治療が必要になります。

こどもの場合、
1)呼吸が浅く速い
2)手足がじっとりとして冷たい
3)ミルクの飲みが悪い
4)体重の増えが悪い
などが心不全の代表的な症状と考えられます。

こどもの病名に、「単心室症、完全大血管転位、肺動脈閉鎖、動脈管開存・・・」といろいろな病名がついていて、どの病気を調べてよいのか、どんな手術になるのかわかりにくい。

こどもの心臓病にはさまざまな種類があり、また、いろいろな組み合わせがあるために、複雑心奇形では、病名が長く、難しくなってしまう場合があります。わかりやすいのは、最終的に「両心室循環」になるか、「単心室循環(フォンタン循環)」で分類する方法だと思います。心房中隔欠損症、心室中隔欠損症、ファロー四徴症、完全大血管転位症などは前者になり、三尖弁閉鎖症、単心室症、左心低形成症候群などは後者になります。

ところが、「単心室症」に「完全大血管転位症」などの病名がくっついていると、どちらが主なのかわかりづらいと思います。考え方としては、もし、一つでも単心室循環になるような病名(単心室症、三尖弁閉鎖症、左心低形成症候群など)がついていたら、他の病名がついていても、単心室循環になるというのが原則です。ただし、疑問があるときは、担当の先生に詳しくきいてください。

心臓の手術に関する質問

傷について

心臓の手術においては、心臓の修復が最重要であることはいうまでもありません。しかし、術後にのこる傷跡も、お子様にとって、また親御さんとっても無視できるものではなく、逆に心臓が治った後も傷とは向かい合わねばなりません。我々は日々、いかにこの傷跡を出来る限り目立たず“きれいに”治療するかにも心を砕いています。

従来の縫合方法では、日々成長して行くお子様の傷跡が、時間が経つにつれてケロイド化するなどし、美容上あまり良くないことがあります。特に、先天性心疾患特有の多段階手術、つまり手術を何度も繰り返して心臓を治していかなくてはならない病気のお子様などは、何度も同じ場所に傷が出来るため傷が目立ってきます。

そこで我々は、大学病院としての総合診療体制である特長を生かして、形成外科(皮膚などの傷をきれいに治せる外科)の指導を受け、この傷跡が可能な限り目立たなくなるよう縫合しています。もちろん、傷跡を全くなくすことはできませんが、できるかぎり“きれいに”治せるよう努力しています。

「根治術」と「姑息術」とはどう違うのですか?

心臓の手術には大きく分けると二つの種類があります。「姑息(こそく)術」とよばれるものと「根治術」とよばれるものです。

「姑息術」とは、比較的ちいさな侵襲で心臓や肺の負担をとってあげる手術のことをさします。BTシャント術や、肺動脈絞扼術(バンディング)が、姑息術の代表的な例です。この場合、心臓の血液の流れ方などは普通どおりにはならないのですが、チアノ-ゼ(血液のなかの酸素が足りない状態)を改善したり、心臓や肺の負担をとることができます。そうして体重の増加を待った後に「根治術」を行うことを目指します。

「根治術」は、さらに大きく分けると二種類のものがあります。

ひとつは「VSDパッチ閉鎖術」に代表されるような手術で、手術が終わった後は、血液の流れ方は基本的に普通の心臓と同じ流れ方になります。つまり、心臓のひとつの部屋(右室)が肺への循環を担当し、もう一つの部屋(左室)が全身への循環を担当する血液の流れとなります。

もう一つは、「フォンタン(型)手術」とよばれるのもで、これは本来二つあるはずの心室のうち、一方が使えない場合に行われる手術です。この手術の後は、心室から出た血液は、全身を回った後、直接肺へ向かって酸素をもらってからまた心室へと帰っていきます。本来の血液の流れ方とは異なるため、心室がひとつしか使えないこどものための「機能的根治術」とよばれることもあります。通常、生後すぐ行える手術ではないので、何回かの姑息術の後に行われることが多いです。

心臓のなかのパッチは、こどもの心臓が成長したらどうなるのですか?

心室中隔欠損症などの手術で、「パッチ」とよばれる人工物を心臓のあなをふさぐために使用することがあります。パッチは人工物なので成長はしませんが、次第に自分の組織がパッチの表面を覆い、外から見てもわからないようになります。そして、パッチの周りの自分の心臓の筋肉が成長していくので、パッチが成長しなくても穴が大きくなったりすることはなく、とりかえる必要もありません。

手術が終わったら、どのくらいで退院できるのですか?

手術の内容にもよりますが、新生児以外の手術の多くの場合では、手術が終わってから1週間から10日前後で退院となります。もっと早く退院する施設もありますが、我々の施設では、患者さんが遠くからこられることも多いので、安全をみて術後1週間で超音波検査を行い、異常のないことを確認した後、退院していただいています。新生児の複雑心奇形などの場合は、体重が増えて安心して退院できるようになるまでに数ヶ月かかることもあります。

輸血が必要になることはどのくらいありますか?
輸血の副作用が心配です。

心臓の手術で人工心肺を使うときには、人工心肺の回路にみたされる液体の分だけ、血液が薄まってしまいます。大人の場合と違って、子供の場合は体が小さいために、この血液の薄まりだけでかなりの貧血になってしまう事があります。目安としては、体重が8kg以下の場合は、輸血が必要になる可能性が高いと思われます。貧血の状態で無輸血で頑張るという方法もありますが、回復が遅くなったり発達に影響があるという報告もあり、輸血のリスクと照らし合わせて判断し、必要があれば輸血を行うようにしています。

輸血の副作用ですが、一番心配なのはテレビなどでも報道されているように、肝炎などの感染症です。もっとも多いのがB型肝炎といわれています。昔と比べて、現在では検査の技術が発達して輸血による肝炎の頻度は激減しましたが、それでもまったく0というわけにはいっていないのが現状です。具体的には輸血後感染症の危険性は下記のように推定されています。

B型肝炎ウイルス:約30万バッグの輸血に対して1例の感染
C型肝炎ウイルス:例数は少ないが2200万バッグの輸血に対して1例の感染と推定
HIVウイルス(エイズウイルス):例数は少ないが2200万バッグに対して1例と推定

子供の手術を行う場合には、1~2人分の輸血ですむことが多いですから、実際にはこれよりもさらに少ない確率だと考えられます。また、アレルギー反応、じんま疹などのおこる確率は1/20から1/100といわれています(約10人分の輸血をされた場合)が、血圧が下がったりする重篤なものは1/10000以下だとされています。

退院後の生活に関する質問

退院後はどれくらい通院が必要ですか?

通常、退院してから約2週間後に外来にきていただきます。そこで、レントゲンや採血をして、問題がないかどうかなどを診察します。その後は、大体一ヶ月おきに通っていただき、様子をみながら徐々に間隔をのばしていきます。特に問題がなければ、最終的には1年おきに通院いただくなる形になることが多いです。 ただ、手術を終えたからといっても、お子様の長い余命を考慮した場合、完全に健康な子供として気を抜くことが出来るとは必ずしもいいきれません。就学、就職、結婚や出産などを全てのお子様がクリヤーできるわけではありません。現在国内には30~50万人とも考えられる成人に達した先天性心疾患の患者様がおられると推定されていますが、医療機関が十分に対応できているとはいえません。お子様の今後を考えた場合、相談にのってもらえる専門の医師や医療機関を定期的に受診し続けることを強くお勧めしています。

退院後は、運動制限などはどうなりますか?
学校の体育の授業は休ませなければいけないですか?

運動制限についてですが、概ね乳幼児では制限はありません。小学校に入学すると「学校生活管理指導表」を提出することになります。この際、担当医から運動制限についての説明があります。

心臓の手術は多くの場合、「胸骨正中切開」といって胸のまんなかの骨を縱にきって行います。当院では、ちいさなお子様(体重10kg以下)の場合は、専用の丈夫な糸、10kg以上のお子様の場合には、ステンレス製のワイヤーを使って骨を継ぎとめています。大体骨が完全にくっつくのに3ヶ月くらいを目安としていますので、それまでは、胸に大きな力がかかるようなことは避けてもらっています。ただ、まだ歩くことができない新生児、乳児の場合にはそれほど神経質にならなくてもかまいません。

そこで、学校の体育については手術から大体1か月してから軽い運動に参加することは許可していますが、ドッジボール、鉄棒など胸を強くうつ可能性のある運動は3か月以降にしてもらうようにしています。

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